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レイバーデーだというのに働く者にはいやな時代となった (No.1156 11/09/05)

 9月第一月曜日である今日、米国では Labor Day レイバーデイといって休日となっている。日本でいうメーデーと同じで働く者、労働者の祭典の日である。そんな労働者にとっておめでたいはずの日なのに、アメリカの労働者は非常に厳しい状況におかれていて、恒例のパレードで祝う気持ちにもなれないようだ。
 9月2日付けウオールストリート・ジャーナルに、ニューヨーク在住のフリージャーナリスト、肥田美佐子さんが今のアメリカの求職状況を書いていた。それによると、最近「失業者の応募お断り」「現在、仕事のある人か、短期失業者に限る」 といった失業者パッシングともいえる求人広告が、大手を振ってまかり通っているという。長いこと失業しているような人は求人に応募することも難しいことが起こっているらしい。
 失業率9.1%、1400万人もの失業者があふれている米国では、一つの求人に応募者が殺到し、空前の買手市場となっている。雇用する側に有利な状況下では、長く失業しているやっかいな人より、できるだけ「手間を省いて優秀な人材を採用しようという雇用主の意図が見え隠れする」と肥田さんは指摘している。
 「米世論調査会社ギャラップが8月末に発表した調査結果では、米国人10人のうち3人が、もうすぐレイオフされるのではないかと戦々恐々としている」(同)という恐ろしい状況だそうだ。そんな中でもまだ現役労働者として働いていられるのは、資格や能力の面で優秀な人だからで、求人する企業はそうした現役のレイオフ予備軍から雇用したいから、「失業者お断り」なんて言う求人広告が出てきたのだろう。
 しかし、失業者は駄目となると、就職できるのは現在職を持って働いている人に限られることになる。要するに、ヘッドハンティングの公募みたいなものである。これって空腹になったタコが自らの足を食べるのに似ている。優秀な現役だけをみんなで取り合いして、本当に仕事が欲しい人はオミットされているから雇用のチャンスが増えないのだ。
 こんな米国の状況を見るとまだ日本の方がマシかもしれない。しかし、いずれは失職したら、次の職場があるのか期待もできず、賃金もいつまでたっても上がらないまま定年を迎えるなんて世の中に日本もなっていきそうである。
 日本は超円高。たまらなくなって海外移転する企業はこれからさらに増えていくだろう。そうなると労働者が働く場所はますます減っていく。失業率は米国並みに9%くらいまで上昇するかもしれない。それでいて海外に出て行った企業がその後順調に利益を上げることができるかどうかも分からない。世界銀行のぜーリック総裁は「世界経済は危険地帯に入りつつある」なんて不気味なことを景気が良いと言われる北京で言っているのだ。
 日米欧の経済は駄目でも、中国が頑張っているからまだ希望が持てると思っていたが、どうやらこちらも難しい問題を抱えているらしい。中国の住宅バブルは崩壊しつつあるようだし、ぜーリック総裁によれば「一人当たりの所得が3000~6000ドルに達した後に生産性と所得の伸びが停止する中所得国のわな ( middle income trap ) を中国が回避できるかどうか」も分からないようだ。
 経済というのは一直線に伸びて行くわけではない。ある一定の所まで登り詰めればそこで行き詰まる「中所得国のわな」が待ち構えているのだ。そうなるとせっかく海外進出を果たした日本企業も、世界的不況の波には勝てずにつぶされてしまうかもしれない。もちろん先のことは分からないが、少なくとも世界経済という点で我々は大きな転換点に立っているのは間違いなさそうだ。
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by Weltgeist | 2011-09-05 22:59


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