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オオムラサキの冬ごもり (No.910 10/12/06)

 12月だというのに昨日、今日はやけに暖かい。今日も山に散歩に出かけたら、歩いているうちに汗が出てきた。このまま行くと今年の冬も暖冬になりそうな暖かさである。だが、それも明日までで、どうやら明後日頃から次第に寒くなるのだそうだ。
 気象予報官の解説によれば、今、ヨーロッパは北極からの寒気で凍り付いているという。このような場合、ヨーロッパの対極にあたる極東でも偏西風の蛇行で北極から寒気が下がってくるから、今年の冬は寒くなりそうだと予報していた。本当は今日くらいの気温で推移してくれればハッピーなのだが、そうは問屋が卸さないようで、今年の冬はどうやら半端でない寒さが来そうだ。それに対する備えをしておかなければならないだろう。
 暑いのも嫌だが、寒いのも嫌だ。と言っても家にいればストーブもこたつもある。外に出ることをしなければ快適な思いができるのである。しかし、そんな快適な暖房装備を持たない野生生物たちはどうやって冬を越すのだろうか。森から少し離れたエノキの根元の落ち葉をかき分けてどんな虫が越冬体勢をとっているのか調べてみたら、葉っぱの裏側にオオムラサキ幼虫がくっついているのを見つけた。
 ここは郊外とはいえ一応東京都の一部である。まさか日本の国蝶であるオオムラサキがこんな場所にまでいるとは思っていなかった。以前ゴマダラチョウやアカボシゴマダラが飛んでいるのを見ていたので、それらの幼虫が冬支度しているかもしれないと、エノキの根元の枯れ葉を起こして見たのである。そうしたらオオムラサキが葉の裏側にピッタリくっついていたのだ。
 もし小生が見つけなかったら、落ち葉の裏側にひっついてじっと動かず、ひたすら春を待っていたことだろう。その間に冷たい雨が降ろうが、雪が降ろうが、寒風が吹きまくる中を、まるで只管打座する禅僧のように微動だにせず、ただただ無心になって耐えていたことだろう。
 小生はこの東京産オオムラサキの発見に感動し、幼虫を家に持ち帰って飼うことに決めた。彼がいつ冬の眠りから覚めて、来るべき成蝶への道を歩み再開するのか逐一観察するつもりである。かくて、彼はいまわが家の玄関脇の暗い場所に引っ越しさせていただいている。ここは野外より少し暖かすぎるきらいがあるかもしれないが、これから羽化する7月まで小生はお産婆さんになったような心境で彼をお世話し、成長過程を見守るつもりでいる。
オオムラサキの冬ごもり (No.910 10/12/06)_d0151247_20491791.jpg
 小生より若い50代後半と思われる婦人としばしば山で出会う。名前も知らない人だが、彼女は森にいる鳥を撮るのが趣味で、いつも三脚に望遠レンズを付けたカメラを持って歩いている。鳥に詳しくない小生は、彼女からいくつかの鳥の名前を教えてもらった。代わりに蝶のことを教えたら、最近は蝶もターゲットに入ったらしく、今日撮った蝶の名前を教えて欲しいと言ってデジタルカメラの液晶画面に小さなシジミチョウの写真をとりだして見せた。もうシーズン最後のヤマトシジミの画像である。翅はすでにボロボロで次の寒波がきたところで寿命をまっとうしそうな個体であった。
オオムラサキの冬ごもり (No.910 10/12/06)_d0151247_23563064.jpg 「それではこちらも日本の国蝶であるオオムラサキをお見せしましょうか」といったら、「図鑑で見たことがあるきれいな蝶だが、今がシーズンですか」と聞いてくる。「もちろん絶好の時期ですよ。フッフッフ・・」と笑いながら、さきほどの幼虫を見せたら、「キャッ」と言ってのけぞってしまった。「私はこういうの駄目です。寒気がします」という。成蝶はきれいでも、幼虫は不気味で見れないらしい。
 「そうかなぁ。僕はかわいいと思うけど・・」と言いながら、うっとりと幼虫を見つめる小生を「この人は変質者に違いない」という顔をして見ていた。この幼虫が来年7月になれば左の写真のように紫色に輝く翅のオオムラサキに変身することが彼女には理解できないのだろう。
by weltgeist | 2010-12-06 22:19


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