人気ブログランキング | 話題のタグを見る

慢性的な借金体質が産んだ危機 (No.685 10/03/27)

 上司だったW氏はたいへん頭の切れる人で、小生は彼を仕事の上でも個人的にも信頼していた人物だった。ある日その彼が「**君、これからの日本はたいへんなインフレになると俺は思うが、君はどう思う」と意見を聞いてきた。小生は「経済のことは分からない」と答えたら、W氏は日本の財政赤字がひどくなって、将来的にはきっと国債などは償還できなくなる。そのためには借金をチャラにする「スーパーインフレを意図的に起こすかもしれないからそれに備えておく方がいいぞ」と言っていた。なるほど、先日の北朝鮮のデノミと似たようなことをやれば借金はなくなるのだ。
 今はデフレの世の中だから、インフレは考えにくいかもしれないが日本の財政赤字の深刻さを考えたら、十分ありうることである。2010年の予算案の歳出は92兆円で、税収は37兆円。足りない分44兆円は国債発行でしのぐという。年収370万円の人が440万円借金して920万円の生活をしようというのだ。借金が税収より多くなったのは戦後初めてというから、これは危機的状況なのである。
 国や地方全体の公的債務残高は949兆円にもなり、GDPの1.97倍である。IMFの試算では2019年には公的債務残高が個人金融資産を上回り、これ以上の借金は出来ない状況になると予測している。このままだと10年たたないうちに日本の財政はお手上げになるのである。
 EUではギリシャの財政危機がユーロ経済圏を揺るがしている。ギリシャは最終的にはIMFの緊急融資を受け入れざるを得なくなるだろう。90年代には韓国やタイがアジア通貨危機でIMFのお世話になり、厳しい緊縮財政を余儀なくされた。同じような危機のマグマが日本でも静かにエネルギーをためつつあるのだ。景気の悪さを食い止め、景気浮揚策としてジャブジャブ歳出を増やすしかないところに追い込まれた日本は、それでも一向に景気が上向かないで借金だけが増えている。その結果は恐ろしいカタストロフィーに向かっているように見える。ギリシャの厳しい現状は決して人ごとではないのだ。
 国の財政に関わる問題を小生のような素人が論じる事柄でないことはよく分かっているが、自民党と同じ轍を踏んで、意味もない子供手当のようなばらまきをやったり、国民新党のいいなりに09年度第2次補正予算を2.7兆円から7.2兆円に膨らませたりする政府の脳天気さを見ていると心配になってくる。金もないくせに、借金で大盤振る舞いばかりやっていて「大丈夫か」と思ってしまうのだ。
 今や1000兆円に迫りつつある借金はいつ、どうやって返すのか。それを考えるとスーパーインフレは現実味のある解決策と見えてしまう。スーパーインフレが起これば年金暮らしの小生など真っ先に干上がってしまう。「米10㎏が100万円」なんてことになって、今でもスズメの涙だった年金はアリの涙にもならなくなるだろう。大学で哲学を教えてくれたS教授は、1930年代にドイツに留学していてスーパーインフレを経験し、パン一つが何万マルクもしたと話してくれた。しかし、当時の日本円は強かったおかげで、本屋の棚に並ぶ数十冊の本をひとまとめに買っても、わずかな円ですんだ良き時代だったと言っていた。
 願わくば日本の景気が回復して、税収が増えて欲しいが、それは多分これからも期待出来ないだろう。W氏が言うようにインフレで財政赤字の借金をチャラにする事態か、ものすごい増税によって借金を返していくしか道は残されていない。そうなれば、現金を持っていても意味はなくなる。手持ちのお金の価値がどんどん下がっていくから物を買っておく方がマシかもしれない。銀行も企業も倒産が相次ぎ、生活は猛烈に苦しくなるだろう。
 W氏の予測は当たって欲しくないが、今回のギリシャの騒動を見ていて、何故か彼の予測通りの方向に進んでいる気がしてならなくなってきた。我々は破滅からどう身を守ったらいいのだろうか。その道が小生には読めない。
慢性的な借金体質が産んだ危機 (No.685 10/03/27)_d0151247_2229437.jpg

by weltgeist | 2010-03-27 23:28


<< しゅろの日曜日、枝の主日 (N... オオタカの苦い思い出 (No.... >>