すでにリタイアして5年、老後のわびしい生活にもやっと抵抗を感じることなく、甘んじる覚悟が出来るようになってきた。年金の額は驚くほど少なく、とてもまともな生活が出来る状態ではないが、幸いにして住宅ローンは終わっているから、贅沢さえしなければ最低限の生活だけは出来そうだ。生活の質は現役時代に比べるとものすごく質素になって、物も買わない。ひたすら我慢の貧乏生活をしている。
それでもせいぜい70歳くらいまでは自らの力で動けるから、旅行や釣りなど行けるうちに多少は楽しんで、70歳以降は老人ホームにでもお世話になればいいと考えていた。現在67歳になって、そろそろ第二の老後の門が見え隠れしてくる年代になったが、そこで必要になってくるのが後の老後資金だ。一体どのくらいかかるのか、見当がつかない。しかし、かなりの金額を用意しないと最後は悲惨な末路を歩みかねないことは確かなようだ。 自分の人生設計ではいよいよとなったら、自宅を売却して老人ホームに入ればいいと考えていた。ところが、これがとんだ甘い計画であることが最近分かってきた。わが家の近くで売り出されている中古住宅の値段が信じられないほど安くなっているのだ。バブル崩壊というか、土地神話、住宅神話の崩壊がまさに現在進行形で容赦なく進んでいるのである。 自分の家の敷地や建坪、建物の古さから、おおよその売値を想像していた。それが、同じ団地の似た家が、頭をハンマーでぶん殴られるくらいギャップのある値段で売り出されている。「エッ」と驚く、超安値の中古住宅を売り出す折り込み広告が毎週のように入ってきているのだ。それでも売れないから値段はどんどん下がり続けている。もし、このまま下落していくようだと、小生の家は想定外の安値でしか売れないことになる。もはや資産価値なんて言葉は死語にになりそうな状況が起こっているのである。 小生が家を買ったのいまから26年も前の住宅不況下で、価格は底値に近いものだった。その直後にバブルが発生し、わが家も買値の2倍以上高騰した。バブル前の安値で購入できた自分の幸運さを喜んだものである。だが、その後のバブル崩壊で今度は下落し続け、現在は買値を下回わるまでになった。 あの当時、「持ち家が得か借家が得か」という議論が盛んに行われていた。家賃を払い続けても何も残らないが、持ち家なら最後に自分の家は残る。それを売れば何とか資産になると言う持ち家派の主張に同調し、小生は今の家を買ったのである。 しかし、持ち家派の主張は正しかったのだろうか。小生は底値の時買ったからどちらが有利だったか微妙だが、バブルど真ん中の高値で買った人はきっと借りた方が得だったのではないかと思う。現在の社会情勢の元では持ち家の資産価値はほとんど期待できないところまで落ち込んでいるのである。 もちろん、これは地域によっても違うだろう。都心の一等地と小生の家のように夜は狸が徘徊する場所では下落率も違う。また、持ち家であれば、自分の好きなように住めるし、そのほか様々なメリットもある。一概に損得だけで、決めることは出来ない。しかし、わが家周辺の動きを見て、単純に住宅の資産価値を信じる時代は終わった気がする。今後は少子化と土地余り(建物の高層化で土地は余ってくる)で以前のような住宅価格の高騰は起こらないだろう。 これから住宅を購入しようとしている皆さんも、またすでに持ち家の皆さんももう一度、自分の家が将来どうなるか、周囲の状況を加味しながら検討しなおすことをお勧めする。小生、ボーッとしていて知らぬ間にわが家の老後設計が崩壊しつつあることにようやく気づいたのである。先の読めない時代、状況が日々に悪化していく恐ろしい未来が待ち受けている気がするのだ。
by weltgeist
| 2010-02-18 22:46
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