人気ブログランキング | 話題のタグを見る

他人と比較する愚について (No.544 09/11/02)

 人が無用なストレスを感じるのは他人と比較するからではないだろうか。他人の給料や生活を気にすれば、無間地獄に落ち込む。上を見ればきりがない。下を見てもきりがない。自分は自分であり、他人のことなど気にしなければいいのだが、それが出来ないのである。
 時折週刊誌などでやっている「日本の上場企業全社の年収比較」というようなくだらない企画を見ると、本当に腹が立つ。他人の給料を知ったところで、自分の給料がどうにかなるものでもない。気分が悪くなるだけである。こうした何気ない比較を意識させられ、人は無用なストレスを負わされていく。何も気にしなければ平穏だったものが、相手の生活を見せられることで、自分の生活が惨めな辛いものにさせられてしまうのだ。

 しかし、物作りをやっているメーカーにとっては、他社との比較、競争はより良き物を造り出すために必要な原動力である。他社が良い製品を作ったら、それに刺激されて自社はさらに良い製品を生み出す。競争はこうして良い製品を生み出していく推進力となるのである。とりわけ、今はやりのデジタル関係の分野では、この競争はものすごい。
 たとえば、小生が好きなカメラの分野でもデジタルカメラの競争が激しい。カメラの世界では「NC戦争」というものが話題になっている。ニコンとキャノンという二大カメラメーカーがしのぎを削る熾烈なシェア争いの闘いである。そして面白いのはカメラの世界ではごく一部のマニアックなファンが、あたかもカメラメーカーの一線営業マンのようにその先兵となってNC戦争に荷担することである。
 最新のカメラ情報、安売り情報が載る「価格コム」というサイトがある。新しいカメラやレンズが出ると、その使用感などを一般ユーザーが報告してくれるから、購入の参考になるサイトである。ところが、ここの書き込みでときどきストレス満載のディベートが見られる。ニコンとキャノンのカメラを持つ先兵たちが、相手のカメラの欠点をけなし合うのだ。ニコンを持つ人は「ニコンが一番だ」キャノンを持つ人は「いやキャノンだ」と言い張って喧々囂々(けんけんごうごう)とやり合いを始めるのである。
 カメラは一度どちらかのメーカーのボディを買うと、レンズもそのメーカーのものになり、互いに互換性がないから他社のカメラは使えなくなる。キャノンを買えば、キャノン、ニコンはニコンと進む進路が決められてしまうのだ。ここからニコン派、キャノン派が生まれ、「キャノンは解像度が悪い」「いやニコンは感度を上げるとノイズが出て、画像が汚らしくなる」と言った相手のカメラのけなし合いが時々起こるのである。相手の欠点を指摘すれば自分が一番と証明されたと幻想する、比較競争観念に取り憑かれたユーザーがいるのだ。
 ネットでのディベートは頻繁に起こるが、たいていは途中で馬鹿らしくなって止めてしまう。ところが、時々陰湿な闘いが続くことがある。こんな場合は、結局書き込みをしていた何人かの人が袋だたきの状態になって去っていく。しかし、相手と比較することで自分の正当性を得ようとしても平安は得られないだろう。憎き相手をやっつけた気持ちよさはあっても、知らず知らずのうちに自分の気持ちが競争意識でスポイルされていることに気づかないのである。
 カメラにとってより良く写真が撮れる機材の性能、スペックは重要であるかもしれない。しかし、最終的にはシャッターを押す人の感性、スキルであって、カメラの性能ではない。たとえ、携帯のカメラのような物であっても、良い写真は撮れるはずである。重箱の隅を突っつくような機能の差ばかり追いかけ、相手の悪口を言いまくる人にはついて行けない。
他人と比較する愚について (No.544 09/11/02)_d0151247_2355429.jpg
昨日と違って今日は急に気温が下がった。北国では初雪の便りが聞こえてきている。枯れ草の上に積もったわずかな冬の使者は、これから本格的な寒さがくることを暗示していた。
by weltgeist | 2009-11-02 23:55


<< キウイの大安売り (No.54... バースデーカードに描かれた猫に... >>