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ワーファリンと脳梗塞の危険4、奇蹟は起こった (No.468 09/08/11)

 突然脳梗塞の発作に襲われて、有無を言わさず入院させられた小生、初めはこのまま一生左手が動かせないのかと思い、絶望的な気持ちになっていた。しかし、この入院によって自分の状況は信じられないほど良くなってきたのだ。入院二日目に左手がほぼ自分の思った通りに動かせるまでに回復してきた。手のひらをグーパーグーパーする動きも昨日よりずっと良くなっている。ラジカットの点滴が脳の血管の中に詰まった血栓の悪影響を軽減してくれたのであろう。
 二日目より三日目、さらに四日目になるに連れて、自分でも驚くほど手の機能が回復してきたのだ。初めはショックでお通夜のような暗い気分になったが、それももう無くなった。自分は治る、元通りに戻れるという希望が見え、気持ちもずっと楽になってきたのである。
 もちろん、改善したと言ってもまだ完全ではない。リハビリのトレーナーが左の手のひらを触って「右手とどのくらい感触が違いますか」と聞かれると、まだ左手の感覚は劣っている。物に触ったときの対象物の質感、暖かい、冷たいといったことの微妙な差異までは分からないのだ。しかし、それでも日一日と確実に良くなっているのが自分ではっきり実感出来るのである。このまま治療とリハビリを続ければ間違いなく元通りになれると思ってきたのである。
 ラジカットの点滴は4日間で終了し、後は飲み薬の治療となった。どんな薬になるのかと思っていたら、何とこれまで自分がずっと飲み続けていたワーファリンである。もう脳に詰まった血栓を溶かす段階は過ぎた。これからは新たな血栓を作り出さないための予防として、血液をサラサラにするワーファリンを飲むのだという。
 だが、それってこれまでずっと飲み続けてきた薬ではないか。それで今回の発作が起こったのだから効果があるとも思えない。しかし、医者が勧める以上、それしかないのかもしれない。自分としては納得出来ないところもあったが、とにかく治ったのだから、今後もワーファリンを医者の指示通りの分量で飲んでいくしかないのである。

 入院6日目に、主治医が来て「運が良かったね。奇跡的だよ。麻痺が全身に行ってればたいへんだろうけど、あなたは運がいい。もう大丈夫だ」と言ってくれた。何とわずか一週間という短期間で、梗塞の麻痺がほぼ完全に治ったのだ。医者がそう言ってくれた以上、もう心配はない。後は退院をいつにするかだけの問題である。
 最初に左手が全く動かなかった状況が一週間程度の入院で治るとは思ってもみなかった。しかし、現実に小生の麻痺は完全に無くなり、左手も従来と変わらない感じで動かせるようになっている。驚くほどの回復ぶりだったのだ。その程度で治ったのは、恐らく麻痺として軽微なものだったからだろう。リハビリルームで体を懸命に動かそうとしている重い麻痺の患者を見ると、自分の幸運さを思わずにはいられなかった。
 そうした運命の分かれ道って、誰がどうやって決めるのだろうか。先日のキルギスの最後の最後でターゲットとしていたカルトニウスを自分が採ったときもそうだった。自分には幸運の女神がついているのだろうか。運命の不思議さを思わざるを得ない。
 一方で、悪い運命を与えられ絶望する人もいる。気の毒なのは、若くしてこうした発作に見舞われた人だ。小生の病室に新たに運び込まれた人はまだ20代の若者で、仕事中に突然発作が起こり、倒れたらしい。それも手足がほぼ麻痺した重傷である。まだ、結婚もしていないようで、これから人生を築き上げて行こうと希望に燃えていた彼の前に、発作が突然立ちはだかったのである。さらに言えば、自分と同じくらいの年齢の患者が沢山いた。彼らも予測していなかった麻痺に襲われ、体の自由を奪われた人たちである。人間誰も一寸先は闇なのだ。明日はあなたが同じ発作に襲われるかもしれないのである。
 こうした人たちが治療とリハビリでどこまで回復するのか、専門的な知識がない小生には分からない。小生の場合はその危機的状況から何とか脱出出来たが、いまだ麻痺に悩んでいる人たちのことを思うと、単純に喜ぶ気持ちにはなれない。
 退院の前に主治医がもう一度MRIの画像を見せてくれた。今回の3個の血栓以外に、過去に何個か血栓が脳に飛んで詰まった形跡も残っていた。今回はそのうちの右脳に飛んだ2個が麻痺を発症させた。これを見ると本人が気が付かないほど軽い脳梗塞は過去に何度か起こっていたのだ。そうしたことを知れば、もはや無謀なことは出来ない。もう一度発作が起これば、今度はそんな軽い症状ではすまないかもしれないからだ。
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 退院して今日で12日目になる。もう左手の麻痺はまったく無くなり、平常そのものの生活に戻っている。しかし、今までのような無理は今後出来ないだろう。なるべ無理をしないように、注意しながら生活していかなければならないのだ。しかし、そうしたことを厳密に守るのは難しいことでもある。
 実は小生、またまた悪い癖を出そうとしている。喉元過ぎれば熱さを忘れるで、明日から出かけるのだ。行き先はアラスカである。前々から計画していたことで、今になって小生がキャンセルするわけにはいかないのだ。友人は「釣りバカにつける薬はない」と皆から言われるぞ、と忠告するし、妻は呆れはてている。でも、今回は自分も少し怖いのだ。だから、アラスカに行っても、今度だけは無理をしないよう、静かに釣りを楽しんでくるつもりである。どこまで自制出来るか分からないが、とにかく18日に無事に帰って来れるためにも、自分の釣りバカ精神の暴走だけはしないつもりだ。
by weltgeist | 2009-08-11 21:21


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