ワーファリンと脳梗塞の危険2、突然襲った発作 (No.466 09/08/09)

 日本人の死亡原因で一番多いのが心筋梗塞と脳梗塞なのだという。心臓の悪い小生にとってはどちらにしても怖い病気が待ち受けていることになる。特にいつも狭心症の発作に悩まされているから、心筋梗塞については細心の注意を払っていたつもりである。しかし、まさか自分が脳梗塞になるとは夢にも思っていなかった。それがワーファリンの飲む量を減らしたらたちまち発作に襲われてしまったのである。
 「素人考えで医者が処方した薬の量を勝手に変えるからだ」というご批判はあると思う。しかし、実はキルギスへ行く前にある医科大学で心臓外科の先生に、ワーファリンと痛み止めを一緒に飲んだら出血性胃潰瘍になってしまったことを相談していたのである。「これからキルギスへ行くに当たって痛み止めは飲まざるを得ない状況になる。その場合、ワーファリンの量は減らしてもいいのだろうか」という質問をセカンドオピニオンとして聞いてきていたのだ。
 今まで担当してくれた心臓専門医が信頼出来ないわけではない。ただ、ワーファリンを飲んでいると、しばしば出血が起こることに不安を感じ、心臓専門医とは違った先生が、どのように考えているかセカンドオピニオンとしての意見を知りたかったのである。
 第二の先生はワーファリンという薬の性質を丁寧に説明してくれた後で、ワーファリンを飲んでいても脳梗塞を起こす人の確率は年間1%はあると教えてくれた。そして、問題はこの1%とは別に脳内出血という別な事故の発生が増えてくると言うのだ。だから、脳からの出血の恐れがある人でワーファリンを止めている人も沢山いるらしい。
 ということはワーファリンは止めてもいいのだろうか。出来れば小生はそうしたい。だが、止めると年間5%の人が脳梗塞を起こすデータもあると教えてくれた。飲んでいても1%、飲まなければ年間5%。毎年百人に5人が脳梗塞を起こすことになる。10年で50%、20年では100%の人が危ないのだ。
 この数字を示しながら、先生は最後に「ワーファリンという薬は使い方がたいへん難しい。ちょっとさじ加減を間違えれば脳内出血や脳梗塞を起こす。しかし、5%の確率にあなたが入るかどうかは分からない。もしキルギスへ一ヶ月行くとすれば、年間の5%は計算上12分の1となり、0.4%に軽減される。その確率をどうとるか、それを撰ぶのはあなた自身だ。これはその人がどう生きるかの問題でもある。あなたの人生観で判断すればいい」ということを言われたのである。この言葉を聞いて、自分はキルギスへ行っている間はとりあえず、薬の量を減らそうと決心したのだ。0.4%の確率は宝くじ的な確率だから、まさかそれに自分が入るとは思わなかったのである。
 
 ところで、脳梗塞なるものが実際にどのような症状になるのか、案外知らない人が多いのではないかと思う。自分の周りにも何人かなった人がいて、知識としては知っているつもりであった。しかし、自分が現実になってみて、これがたいへんな病気であることが分かったのである。
 最初の症状は手に持っていた携帯電話が滑り落ちたことだった。このとき自分は携帯をしっかり握っていたから滑り落ちるはずがないと思いこんでいた。だから何故落ちたのかしばらく理解出来なかったのである。そして、それを拾い上げようとして、左手がまったく言うことを聞かないことに気づき、脳梗塞であるとわかったのだ。
 この時の左手の感触は一種不思議なものだった。肩から伸びている手が、何か自分の体とは全然関係ない物をぶら下げている、と言った感触だったのだ。とにかく、左手を自分で動かそうと思っても、全然動かない。左手は自分の動きに無関係に、常に垂直にぶら下がっているだけなのである。
 そうしたことがほとんど瞬間的に起こった。ほんの数秒前までしっかり携帯を握っていた。それが、劇的に変わってしまったのである。しかし、幸いなことに麻痺しているのは左手だけで、足は何ともない。よく脳梗塞を起こすと言語障害を起こして、言葉も出なくなると聞いていたが、言葉は普通に話すことが出来る。ただ左手だけが麻痺しているのだ。
 病院に着くと、まず医者の問診があった後、緊急にMRIによるCTスキャンやレントゲン、心電図を撮る。そして、医者と一緒にMRIのデータを見る。すると脳の中に白い物が3カ所ほど写っていた。「これだ。血栓が脳に飛んで脳梗塞を起こしている。これは入院だな。しばらく帰れないよ」と医者は言った。
 「そんな・・」
 人には誰でも予定というものがあり、その中には絶対変更出来ない重要なものもあるはずだ。入院となれば、それも全部キャンセルしなければならない。自分は友人と約束していたいくつかのアポイントメントのことをまず考え、それからまたブログを中断することで、これを読んでいる人がどう思うかといった甘いことを考えていた。この時はまだことの重大さを全く理解していなかったのである。
 しかし、考えようが考えまいが、理解しようがしまいがそんなものは関係ない。深刻な事態であることはやがて否応なく分からされてくるのだ。数時間前までピンピンしていた小生は、腕に点滴を打たれた姿でストレッチャーに乗せられると、有無を言わさず、病院のベッドに運ばれていったのである。
以下明日に続く。
d0151247_1959039.jpg
新宿へ行く度にいつも寄る大ガード下のペットショップで、かわいらしい子猫が檻に入っていた。彼(彼女かもしれない)も小生と同じで、檻の中に囚われの身なのだ。入院した自分には「ここから出して欲しい」と訴える猫の気持ちがすごく分かる気がする。
[PR]
by weltgeist | 2009-08-09 20:00


<< ワーファリンと脳梗塞の危険3、... ワーファリンと脳梗塞の危険1、... >>