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キルギス、北パミール高原の旅10、ビシケクへ (No.462 09/08/04)

7月15日
 昨日は昼間アラベルパスでテンシャンウスバシロチョウを狙った後、次の峠道であるチューアシューパスの小屋に泊めさせてもらえた。行きも通ってきたこの峠は、アレクサンダー山脈を超えて首都ビシケクへ至る最後の高地である。日光のイロハ坂のようなジグザグな坂道を行ける所まで上りきると、最後はアレクサンダー山脈をくり抜いたトンネルで通過する。そのトンネルを管理する人たちが泊まる専用の施設に泊めてもらえることになったのだ。
 この小屋に泊まれたのは非常に幸運だった。というのも夕方、宿泊交渉が成立した直後頃から、急に雪が降り出してきたからだ。一番高い所はトンネルで逃げていると言っても、小屋の標高は3150mくらいある。真夏でも雪が降り、夜は氷点下になる場所なのだ。そんな中で暖かいベッドに寝れるのは幸せなことである。外は雪でも小屋の中は暖かく、サウナもあるから、この夜はぐっすり眠ることが出来た。
 翌、15日は午前7時に起床し、7時半食事。昨晩の雪はすでに止んでいて、空には晴れ間がのぞいている。今日は夕方までにビシケクに戻らなければならない。長かった旅行の最後の日であり、明日の朝には帰国のための飛行機に乗らなければならないのだ。
 チューアシューパスからビシケクまでは3時間くらい。昼過ぎ頃まで時間があるので、最後の採集を峠の西側の斜面で行った。ここにはデルフィウスウスバシロチョウとアクティウス、それに昨日採ったテンシャンウスバシロチョウがいるという。アクティウスとテンシャンはすでに採っているからいいが、デルフィウスは新顔である。もしこれが採れれば小生は全部で8種+2亜種で合計10種類のパルナシウスを採ったことになる。これだけ(現在9種)採ればもう十分ではないかという気持ちがある反面、新顔がいるとなるとまたまたやる気も起こってくる。人間、まことに欲の深いものである。
 だが、欲を張りすぎるとろくなことはない。期待したデルフィウスはシーズンが遅すぎたらしく、全然お目にかかれなかった。それにも関わらず、欲につられて奥の場所まで行きすぎて、集合時間に遅れてしまったのである。釣りでも入れ食いで釣れているときに、集合時間が迫ってくると竿を仕舞うのが遅れがちになる。「あと5分、3分」と時間を延ばし、集合時間に戻った仲間に迷惑を掛けてしまう。その悪い癖が、ここでも起きて遅刻をしたのだ。
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チューアシューパスは日光のイロハ坂のように、ヘアピンカーブが連続した登りになる。この場所にはデルフィウスウスバシロチョウという新顔がいると言われたが、すでにシーズンが終わっていて姿は見えなかった。

 峠を出たのは12時40分。車は下り坂をどんどんスピードを上げながら降りて行き、午後3時にビシケクに着いた。我々の蝶採集許可がどのようなシステムになっているのか分からないが、待ち受けていたセルゲイがパーシャから現地捕獲許可の書類を受け取ると、急いで役所に向かって行った。その間に我々はビシケクのホテルにチェックインする。
 これがとても大きなホテルなのに閑散としている。宿泊客は我々だけかもしれないと思わせるほどで、閑古鳥が鳴いている感じである。その理由は多分、宿泊代が高いからではないかと思う。今まで250ソムくらいで泊まっていたのが、このホテルは一人2000ソム(約4400円)もするというのだ。それも首都のホテルなのにクレジットカードも使えない。現金しか駄目だというから、きっと高すぎてお客も少ないのだろう。
 しかし、部屋はきれいでシャワーも使える。久しぶりに体を洗い、新しいシャツに着替えてさっぱりしたところでセルゲイとパーシが戻って来て、まず、蝶の国外持ち出し許可証をくれる。我々がホテルに行っている間に、セルゲイが役所の印が押されたお墨付きをもらってきてくれたのである。これで、もう通関時の心配も無くなった。
 この後はセルゲイの家に招かれてディナーをごちそうしてくれると言う。今までまずい飯を食べていたのが、ディナーである。しかし、小生は食事より彼がどのような家に住み、どんな生活をしているのかに興味があった。キルギスを旅して来ても一般の家の中に入ってその生活ぶりを見せてもらったことはない。それが今夜明らかになるのだ。この招待は未知なる場所を探索する好奇心の強い子供のような期待感を小生に与えたのである。
 彼の家は少し古ぼけた団地の3階にあった。建物の外見は日本の古い公営住宅と同じように見えたが、中を見てビックリ。部屋の広さは多分100㎡くらいだろうか。洒落た家具や飾り物あり、壁にはトリバネチョウの標本が沢山張ってあるすごくきれいな家だった。玄関で日本式に靴を脱ぎ、中に入ると奥さんのルーバさんが我々を奥の食卓に招く。そこにはすでにおいしそうな彼女の手作りの料理が沢山並べてある。これがうまい料理ばかりだった。今まで食べてきたキャンプの食事とは雲泥の差で、抜群の味である。最後は木イチゴが入った手作りのケーキまで頂き、「ハラショー(素晴らしい)」の連発となった。
 おいしい食事と楽しい話にはずみがつき、ホテルに戻ったのは午後9時過ぎだった。
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最後の日はセルゲイの家に招待されて、ディナーをごちそうになった。セルゲイの奥さん、ルーバさんはたいへんおいしい料理を作ってもてなしてくれた。
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ディナーを準備するセルゲイ(中央)と今回の旅の世話をしてくれたガイドのパーシャ(左)二人ともこの国では少数民族(国民の約12%)に属するロシア人である。テーブルに並べられたルーバさんの料理は最高においしかった。
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しかし、何と言っても最終的な興味はどうしても蝶に行ってしまう。セルゲイが集めているパルナシウスの標本の一部を見せてもらったが、集めるのが難しいアウトクラトールやロキシャスなど、珍しい蝶が沢山揃っていて、羨ましい限りだった。こんな蝶を見せられるとまた来年もキルギスに来たくなってしまう。
by weltgeist | 2009-08-04 23:49


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