7月14日
昨日は出来るだけビシケクまでの距離を詰めておこうと夜遅くまで走り、タスコミュールという町で泊まった。ダロート・コルガンで泊まったホテルも同じだったが、ホテルの建物は塀に囲まれるようになっていて、車は頑丈な塀の内側に停めておく。多分、セキュリティのためだろう。シルクロードの時代から何度も侵略され続けた歴史が、家を要塞のような構造にさせてきたのかもしれない。塀の中には従業員の住居もあるようで、昨晩は夜遅くまで塀の内側で子供たちが遊んでいた。 翌朝明るくなってから見たら、ガレージの裏側で朝早くから二人の人がパンを焼いていた。いわゆるナンと呼ばれるキルギスのパンで、炭で熱したかまどの天井に張り付けて焼いていく。インドのナンと同じやり方である。このパンをYさんが一つもらって食べたら、焼きたてだからだろうか、いままで食べてきたものとは別物のようにおいしかったと言っていた。 焼いたパンは我々のUAZの横に停めてあったリムジンの後部座席に山積みしてどこかに運ぶようだ。これを運んでいる女性が美人だったので、写真を撮らせて欲しいと、ゼスチュアーで頼むと、恥ずかしがって逃げられてしまったのが残念である。多分、彼女はパン職人の奥さんなのだと思う。 7時朝食。例のパンとボルシチ風スープにヌードルが入ったもので、小生は今まで食べてきた中では比較的おいしい方と思っていた。しかし、同行した友人二人は「これのどこがおいしいのか」といった顔をして小生を見ている。イカモノ食いでノングルメ、何を食べてもおいしいと思う粗野な小生を、呆れたような顔で見ているのだ。こうしたことは何とか隠そうと思っていたが、育ちの悪さは如何とも隠しようがない。ついつい小生の地が出て、お里が知れてしまったようである。 だが、まずい飯にうんざりしていたグルメな仲間も、この日の昼食だけは満足されたようだった。何かおいしい物を食べたいという気持ちをパーシャも分かってくれただろう。昼少し前にロシア語でアクーユービルス、白豹という名前のきれいなレストランに入った。それはいままでキルギスではお目に掛かったことのないような洒落た建物で、中のトイレも水洗である。 スイスあたりにあっても全然違和感がない立派な山のロッジといった作りで、これは食事も期待出来そうだ。パーシャが頼んだ料理はクーウールダック(発音は自信がないので、多分??)という名前で、子羊とジャガイモ、タマネギのスライスのメインと、トマト、キュウリ、タマネギをドレッシングであえたサラダ。子羊の肉は臭みもなく、大変おいしい。今回は二人のグルメと一人のノングルメ(当然小生のこと)とも満足して食べることが出来た。しかし、この後でコーヒーを頼み、ブラックで飲むと小生のだけ甘い。皆は甘くないというのに、自分のだけ何故かとても甘いのだ。これまで変なものばかり食べていたから味覚まで変になったのかもしれない。しかし、それを最後まで飲み干したら、底に砂糖が残っている。何故か小生のだけ砂糖入りのコーヒーだったから甘かったのだ。まさか、誰か他の人が飲み残したものを出したのではと思いたくないが、すでに後の祭りである。 これだけ食べてどのくらいの値段になるのか、興味津々だったが、4人で870ソム(約2000円)と馬鹿安であった。 昼食を食べ終えてから1時間ほどして標高3175mのアラベルパスに着いた。ここはアラムクンゲイと違って周囲は緩やかな山になっている。この峠にはテンシャンウスバシロチョウがいると言う。しかし、ここでのパーシャのポイント説明は、他の場所と違っていた。山の上に登る必要はない。車を停めた道路脇の比較的下の方にテンシャンはいると言うのである。 なぜ、そんな下にいるかというと、20mほど下に川が流れていて、その川岸にテンシャンの食草であるラディオラという植物が生えているからだ。しかし、自分はラディオラなる植物がどんなものか知らない。するとパーシャが川まで降りて行って見本を採って見せてくれた。下の写真に載せたように、日本では見たことのない植物で、テンシャンはこれを食べているから、川の近くから離れないのだ、とパーシャが説明している途中で、すぐに1頭飛びだし、Tさんが素早い身のこなしでそれをキャッチする。 だが、パーシャのポイント説明が終わっても、のろまな小生はなかなか蝶をみつけられない。見つけられないということは採れないことでもある。見ているとTさんは盛んにネットを振っているから、順調なのだろう。しかし、小生の方は成績が芳しくない。採れないな、と思っていると、背後から誰かが声をかけてきた。 見ると5~6人の家族連れが、小生の方を見てしきりに何か言っている。しかし、ロシア語だから当然何を言っているのかは理解できない。パーシャが来て「お前の捕虫網を見て、魚が獲れたかどうか聞いているのだ」と言われてようやくこの人たちが何に関心を持っているのかが分かった。彼らは捕虫網が魚獲り用タマアミに見え、小生のことを釣り師と間違えたようだ。そこでこちらも以前アラムクンゲイでもやったように、知っている限りのロシア語で挨拶してから、アレクセイから教えてもらった「バーボーチカ、バーボーチカ(蝶)」と言うとようやく彼らも納得してくれた。 だが、彼らが周りにやって来たことで急に騒がしくなってしまった。家族は全員で6人もいたから、仮に蝶が飛んでもこんな大人数に警戒してこちらに来なくなるだろう。この邪魔な人たちが早く何処かへ行ってくれないか、と思っても自分の周りから離れない。何故か、小生は彼らに好かれたようで、離れてくれないのだ。これは困った事態になったものである。と思っていたら、急に彼らの一人が何かを見つけて騒ぎ出した。 何を言っているのかはもちろん分からないが、彼らが指さす先にはテンシャンウスバシロチョウが草の間に隠れるようにして止まっているではないか。丁度太陽が雲に隠れて蝶も休憩していたところを見つけてくれたのだ。これは有り難いと、思ったら、家族全員が手分けして周囲を探し回り、何と草に隠れているテンシャンを次々に見つけてくれたのである。そのうちの1頭は羽化に失敗して、翅がきれいに伸びきっていないから飛べないもので、これを子供たちが手に乗せて遊んでいるところを写真に撮らせてもらったりして、この日は大収穫であった。もちろん、キルギス人家族とは「スパッシーバ(ありがとう)」と言って、握手をして別れた。
by weltgeist
| 2009-08-03 23:42
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