今日の新聞にTPP交渉難航の一端が安倍首相の靖国参拝にあるという報道が出ていた。オバマ大統領がオランダ・ハーグでの日韓首脳会談をとりもったとき、首相にTPPの妥結を強く迫ったという。昨年の安倍首相靖国参拝で、アメリカが築きあげてきた米日韓による中国封じ込め包囲網にほころびが出てしまった。この貸しをどうしてくれる、TPPでそれを返せと迫られたらしい。
靖国がアメリカにとってアジア情勢のリスクとなった。アメリカの重要なパートナーである日韓関係がきしむのは、中国を利するだけだ。TPPを早く妥結させて中国に対抗しようと言っているらしい。靖国問題とTPPは別なことと思っていたら、どっこい日米外交の間では「安倍首相の負い目」として位置づけられているのだという。 TPPと靖国参拝は何の関係もないのに、外交交渉ではこうした無関係なことまで交渉の材料にされてしまう。国際問題は思いもかけないことまで影響していくことを知って驚いてしまった。甘利TPP相とフロマンUSTR代表との激しい交渉の過程を我々は知り得ないが、アメリカは靖国問題を失点として利用し、自国の利益を要求してくるのだろう。 ここへ来て騒がれているのは、日本の農産品重要5項目の関税がどの線で妥結するかであって、TPP参加、不参加の議論など吹っ飛んでいる。今朝のテレビでTPPに大反対だった山田正彦元農相が、改めてTPP反対の意見を述べていたが、もはや周辺国が皆TPPへなだれ込もうとしているとき、日本だけがカヤの外に置かれたらどうするのか問われて答えに窮していた。現代のような国際間の連携が密な時代にあっては、TPPはもはや不参加の選択肢は残っていないのだろう。 いまはアメリカの関税ゼロ要求の風圧にできるだけ耐えていくしかない。そのためにも靖国問題のような弱みを握られてはならない。どのくらいの関税率で妥結するのか、あるいは交渉が決裂するのか分からないが、いずれはTPPは妥結し、さらに関税はゼロに近づいていくのが趨勢であろう。直接影響を受ける関係者の方々はたいへんだろうが、歴史の歯車は簡単には止められない。これからはTPPによる新しい時代が始まると考えておくしかない気がする。
by Weltgeist
| 2014-04-19 23:01
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